信用取引を行うにあたって、最大の利点は、手持ちの資金量を上回る、比較的高額の投資を行うことができることです。細かい規定などは証券会社ごとに定められていますが、おおむね3倍強程度まで資金力を高めることができます。
誰でも信用口座は開設できる?
現物とは別に信用口座を開設
信用取引を行うには、証券会社に信用取引口座を開設しなければいけません。既に現物株式の売買を実施している投資家であれば、特に問題がなければ、自分の取引している証券会社で口座の開設手続きをするのが自然でしょう。
一方、「これから株式投資を行いたい」という方でしたら、まずは証券会社選びから始めなければなりません。
対面式の証券会社の場合、大手や準大手ですと、相応の預かり資産がないと、なかなか信用取引はさせてもらえないようです。比較的「敷居が低い」のは中堅以下の証券会社とみられます。
これは現物、信用に共通することですが、自分の適性にあった証券会社を選ぶことが大切です。「多少手数料が高くても、担当の証券マンと相談しながら売買したい」という方でしたら、対面式の従来型証券会社を選ぶべきでしょうし、「売買は自分の判断で行う。『有望銘柄』や投信を勧められたりするのは煩わしいと思うのであれば、ネット証券を選んだ方がいいでしょう。
さらに最近では、対面・ネットの両方での取引が可能な証券会社も増えてきています。
ネット証券では電話などで審査
信用口座を開設するには、通常ですと、まずは現物株で2、3カ月の取引実績を積むことが求められることが多いようです。その上で審査に通れば、「信用取引口座開設設定約諾書」に署名・押印し、4000円の印紙税を払って、口座を開設。晴れて信用取引ができるようになります。
なお、この「約諾書」は、日本証券業協会や全国の取引所が定めているもので、どこの証券会社でも文言は統一されています。面倒くさがらずに、実際の売買を始める前に、簡単に文面をチェックしておくことをお勧めします。
ネット証券の場合、手順はもう少し簡単です。ネット上で信用取引口座開設書類を請求し、必要事項を記入して郵送します。審査は電話によって口頭で行われるケースがほとんどです。ここでは、信用取引についての基本的な知識を備えているか、そして、各社それぞれの社内ルールの確認などが主となります。もちろん、ネット証券でも「約諾書」の差し入れは必要です。
信用取引は極めて単純に言い換えれば「借金による株式売買」といえる。まず、証券会社に委託保証金(担保)を差し入れる。現在、証券会社の多くは売買に必要な金額の30%(以上)の担保が必要と設定している。つまり、現金100万円を担保に入れると約330万円まで株式の売買ができる(100×1÷0・3)ことになる。また、担保は現金だけでなく既に取得した株券でも可能だ。しかし、その際は時価の80%(掛け目)で計算する。
ここが信用取引の最大のポイントになる。つまり、100万円の資金があれば現物取引の3倍以上の株式が購入できるわけだ。具体的に説明すると1株100万円の株式を信用取引では最大限3株買える。この銘柄が130万円にまで上昇すると90万円の値上がり益(手数料、金利、税金などを無視)になる。いわゆるレバレッジド効果といわれるものだ。値上がりすればいいが意に反して値下がりすれば当然3倍の損失を被ることになる。
また、信用取引は売りから始めることもできる。一般に「カラ売り」といわれる投資だ。初級者には判りにくいので詳しく説明します。株価が将来下がると判断した場合、まず証券会社で株券を借りる形で売り、後日その銘柄が下がった時点で購入し、手にした株券を証券会社に返却する。
また、個別銘柄だけでなく同時に発表される3市場全体の信用取引の状況もチェックが必要。例えば3市場全体の買い残が増加している場合、市場に流入している資金が増えており、物色人気が高くなっているといえる。同時に将来の売り圧力が強くなるのだから、市場全体の調整色が強くなっている場合は注意が必要。また、売り残が増えてくれば高値警戒が強くなっているか既に調整局面に入ったと捉えることが出来よう。いずれにせよ断片的に見るのではなく時系列で捉える必要がある。
信用取引の際、注意したいのが融資を受けるとき(信用買い)の金利。証券取引所が銘柄を選定し取引期間6カ月以内の「制度信用取引」、証券会社が独自に銘柄、取引期間などを決める「一般信用取引」(一部の証券会社が実施している「無期限信用取引」を含む)とでは金利が違ってくるケースがほとんど。現状の低金利下では負担が軽いとはいえゼロではないし、「ネット証券」では一般の2倍前後の金利を設定しているところもあるようだ。特に値下がりした場合は損失が広がる。

